●草原でモータースポーツ
ぼくがまだ20代のころ、バイクで風を切るのが好きだった。
夏は暑いし、冬は寒い、雨が降ればずぶ濡れになってしまう乗り物だが、それでも人車一体となって風を切る感覚は他に代え難いものがあった。こいつといっしょならどこへでも行けると、各地を旅してまわったものだ。そんな相棒と別れて10年近くになるが、今でも恋しく思うことがある。

気持ちよさそうに風を切る友人f嬢
しかし、このバイクがくせ者で整備状況はかなり悪い。油断しているとすぐエンストするし、前輪のブレーキレバーは無くなっていた。ブレーキが使えないのは致命的ではないかと思ったが、走り出してみればそんなことは杞憂だと気がつく。見渡す限りの草原では、物陰から何かが飛び出してくることはないのだ。急制動を行う必要はないので、エンブレとリアブレーキだけで十分だった。
久しぶりのバイクでおっかなびっくり走り出すと、景色は後方へと流れ出す。ギアをかき上げながらアクセルを開けていくと、バイクは弾かれたように加速を開始した。懐かしい感覚に心を振るわせながら、このまま地平の彼方まで走り続けていきたいような気持ちに支配されるのだった。
日本にいたころもバイクは自由な乗り物だと思っていたが、ここでのそれは桁違いだった。ヘルメットやグローブも付けずに風を切るのは初めての感覚だし、スピード制限などの交通ルールもない。何よりここでは道すら存在せず、すべての制約を解き放ち好きな場所へ行けるのだった。
思う存分バイクを楽しんだあとは、ATV(Allwheel Traction Vehicle:全輪駆動車)と呼ばれるバギーにも挑戦してみた。かつてコタキナバルにて同様の乗り物を楽しんだが、その走破性は草原にぴったりの乗り物だ。デコボコ道や荒れ地、ちょっとした岩場などをものともせずに進む様はなんとも心地よい。水たまりや段差に自ら飛び込みたくなるのだ。
これらは内燃機関で走るので、排ガスが出る。そう考えると草原でこれらを乗り回すのは悪いことのようにも思えるが、それでも抗いがたいほどの魅力がある。上海に来て以来、すっかりモータースポーツから遠ざかっていたが、また自由に走り回りたいとの想いが強くなってしまったようだ。









