●雨の散策と小龍包
仕事で来ているのだから当たり前なのだが、出張中は自由に使える時間が限られている。
せっかく見知らぬ土地を訪れたのに、旨いものを探したり観光できないのがもどかしい。
仕事をほっぽりだして街へ繰り出したいところだが、そうもいかないのが会社勤めだ。
せめてもの慰みにと、仕事明けの夜間や早朝に、あちらこちらを歩き回ることとなる。
小糠雨の降りしきる朝、ホテル周辺に点在する胡同と呼ばれる古い街並みを散策する。
何でもない細い路地に人々の生活が見え隠れし、庶民の暮らしを垣間見たような気になる。
雨なのに放置された洗濯物、打ち捨てられたタライ、崩れそうな門扉が何故だか愛おしい。
迷路のように入り組んだ脇道に目をやれば、まるで何かの物語が始まりそうな予感。
今にもあの角の向こうから、黒づくめの男たちに追われる少女が駆けてきそうな気がして
無意識にカメラを構えてみたものの、いつまで経ってもそんなものは現われなかった。
そんな事件は現実にはないだろうが、それを感じさせるドラマティックな場所が多かった。
雨に煙る街角で、小龍包を出す店を見かけたので迷わず飛び込んだ。
北京まで来て小龍包かと突っ込まれてしまいそうだが、好きなものは好きなので仕方ない。
まして、看板には『杭州小龍』と書かれており、今までと違うものが喰えそうな予感がする。
待つこと1分、熱々の湯気を纏って現われたのは、ぼくの想像を遥かに越えたものだった。
蒸篭の中にぎっしりと詰めこまれた自称小龍包は、ふわりと分厚い生地のミニ饅頭だった。
中身はよくある甘辛い肉餡が詰まっており、先日食べた狗包子のでき損ないに見える。
杭州で小龍包を食べたことはないが、どう考えたってこのような食べ物ではないはずだ。
果たしてこれを見た杭州出身の人たちは、どのような想いをその胸に抱くのだろうか。
たこ焼きを注文したのに、出てきたのは明石焼きだったくらいのショックかもしれない。
何だか釈然としないものを感じたものの、こんなアクシデントもまた旅の楽しみだろう。
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杭州小龍
住所 北京市東城区景山東街15-3
予算 小龍包(10個) 3RMB

















































